鋼田一忍44歳。第二部Ⅶ   

2日後、福山は仕事の段取りを付けてから、忍宅に向かおうと思っていた。。。

忍宅では母親がアシスタントの芹沢孝徳に自慢気に鮪の大トロの柵を見せていた!

芹沢君見て、この大トロ!デパートの地下で売ってたから、奮発して買ってきたの!高かったけど忍も大好きだし、芹沢君も食べてってね!忍も早く散歩から帰ってくればいいのに・・・
あれ?芹沢君?今日のお昼ここで作ったの?

芹沢
いいえ、今日は作ってませんけど・・・どうかしましたか?
うん・・・刺身を切る、柳刃包丁が無いのよね~、私が何処かにしまったのかな?まあいいや、もう一本の包丁で切ろう。

仕事を終らせた福山は、忍宅に向かっていたが、帰路は酷い渋滞中で中々前に進まなかった。。。
何気に忍の散歩の事が気に成った福山は何故急に散歩するのだろうか?何時から散歩する様になったのか。。。
忍は・・・キャロルの隠れ家が判ってから散歩をする様になった。。。30分程で帰ってくる・・・30分・・・片道15分か・・・
・・・15分!!
丁度万毛町の珍宝橋の辺りじゃないか?
まさか!忍は!!

福山は何かピンと来たらしく、強引な追い越しで渋滞を抜け、忍宅まで急いだ。。。




カツン・・・カツン・・・カツン・・・
鉄製のアパートの階段を登る音が、静かな清流に掛かる珍宝橋に響き渡る。

203号。
コン・・・コン・・・
誰かがノックをしている。
ガチャっと扉が開き、中からフィリピン人女性が姿を現した。
どちら様でしょうか?
フィリピン人女性はピンと来たらしく、続けてこう言った。
アナタガ忍さんですか?忍さんですよね?私は弁護士のトリーナディアリノで~ス、捺印に来たのですか?私に従って貰いマス。
と言い、チラリと部屋の奥を見た。。。。
忍は蒼ざめた顔をしながら、ボソボソと何かを言い始めた。

・・・をし・・・・えか?
お・・をバ・・た・・・はお・・か?
俺を・・・かに・・する・・・おま・・?

俺を馬鹿にするのはお前か~~!


グサッ!ブスリ!!

忍は隠し持っていた、刃渡り25センチの柳刃包丁でトリーナ女史の首・胸を数箇所刺し、トりーナ女史は声を上げるまもなく、目は白目になり、糸の切れた操り人形の様に膝から崩れ落ちた。。。
忍は奥の部屋に進み、隅っこでガクガクを震えているキャロルに寄って行き、
キャロル・・帰ろう・・・帰ろうよ。

キャロルは恐怖に引きつった顔で悲鳴を上げながら忍の横をすり抜けようとした刹那!
無意識の内に忍はキャロルを刺していた・・・
忍・・・アコ・・・アコね・・・
と言った所で、キャロルは床に崩れ落ちた。

そして忍は刃を自分の頚動脈に当て、一気に刃を引いた・・・

プシュウ~
眼前が愛の色 紅色に染まり、人間としての尊厳も何もかも失って、灰色の世界に堕ちて行く忍に、
善の意識はあの頃の記憶を強烈に押し付ける。。。

      初めまして♪キャロルで~ス!ヨロシクオニガイシマ~ス☆

      は・は・は・初めまして!し・忍です。

      出合った頃は・・・夢が有りました!

              鋼田一忍44歳


                 
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by bukkakedaimaoh | 2006-12-15 14:50 | 2流小説。

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